1次モニタリング

日本における1次モニタリング

1次モニタリングでは、日中韓の各質保証機関が国内の関連法規や評価制度・手法を踏まえて個別に実施することとしました。また、モニタリング実施後、各機関がその結果を持ち寄って比較分析し、2回目の共同モニタリングの実現可能性を検討する計画としました。

大学評価・学位授与機構(当時)(以下「機構」という。)による日本側の1次モニタリングは、「キャンパス・アジア」のパイロットプグラムを運営する日本側大学の協力を得て2013~2014年に実施しました。機構は、1次モニタリングの基本的な考え方を以下のとおりとし、モニタリングの基準や方法等の具体的内容を『「キャンパス・アジア」モニタリングハンドブック―日本における1次モニタリングの基準と実施方法』にまとめ、実施しました。

  • 機構の定める基準をもとに、採択プログラムの取組の現状をプログラム実施主体が自ら分析する。モニタリング実施側が質保証・質向上の観点から、各プログラムの優れた点や、国際的な教育プログラムにおける課題解決のために工夫した取組を抽出する。
  • モニタリング実施側からの助言等、意見交換を求めたい事柄について自己分析書に記述することで、採択プログラム実施側とモニタリング実施側との意見交換を通じた質向上を目指す。

モニタリング実施手順

日本における1次モニタリングは、下記の表のとおり実施されました。

なお、日本の1次モニタリングでは、モニタリング委員会・専門部会とは別に、「キャンパス・アジア」の参加経験をもつ学生によるモニタリング学生部会を設けました。詳細については学生部会のセクションをご覧ください。

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モニタリング基準

日本の1次モニタリング基準は、以下の7点で構成されます。基準の策定にあたっては、機構がモニタリングの準備段階で組織したモニタリング準備委員会での議論や、採択プログラム連絡会でのプログラム関係者との意見交換、個別のヒアリングを実施し、最終的にモニタリング委員会で定めました。自己分析、書面調査及び訪問調査はすべて、これらの基準に基づいて行われました。

基準
1 教育プログラムの目的
2 教育の実施
2-1 実施体制
2-2 教育内容・方法
2-3 学習・生活支援
2-4 単位互換・成績評価
3 学習成果
4 内部質保証システム

それぞれの基準には、プログラム実施側が自己分析する際に、優れていると考える取組や国際的な教育プログラムにおける課題解決のために工夫した取組を記述しやすいよう、「優れた取組を抽出する視点の例」を列挙しました。さらに、各プログラムにおいて質を伴った教育がどの程度構築できているか自己分析を行うツールとして、基準ごとに「段階判定の尺度と説明」(ルーブリック)を設けました。


実施体制

モニタリング委員会・専門部会

機構は、1次モニタリングの実施のため、高等教育の質保証や国際共同プログラムの運営にかかる経験及び知見を有する学識経験者・有識者等からなる「キャンパス・アジア」モニタリング委員会および専門部会を組織しました。

モニタリング委員会は8名で構成され、モニタリングの基準・方法の決定とモニタリングの結果の確定を主な役割としています。また委員会には、採択プログラムの代表者(2名)も参画し、モニタリングの成果の普及・発信方策等の検討に際して、教育現場の視点を議論に生かすこととしました。

専門部会は、モニタリングの対象となるプログラム実施主体(大学)から提出された自己分析書に対する書面調査をはじめ、訪問調査、モニタリング結果(案)の取りまとめを行いました。専門部会は、大学長、大学の教職員、大学関係機関や産業界からの専門家で構成されています。

採択プログラム連絡会

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日本における1次モニタリングの特徴のひとつに、準備段階で組織した 「キャンパス・アジア」採択プログラム連絡会(プログラム10件の日本側大学の関係者で構成)があります。

連絡会は、モニタリング実施の効果を高めるため、質の保証を伴った国際的な教育にかかるモニタリングの役割や基準等の基本的枠組みの策定にあたり、モニタリング実施側の機構とプログラム実施側の間で意見交換を図ることを目的として設けられたものです。また、「キャンパス・アジア」プログラム全体の実効性を高めていくという観点から、採択プログラム間でプログラム運営上の課題点や解決事例等を共有し、プログラムの進捗について情報交換を行う場とすることも目的としました。

連絡会は、モニタリングの開始に先立って3回開催(2012年7月・9月、2013年3月)されました。また、モニタリング結果の審議・確定後、2014年2月に第4回の連絡会を開催し、採択プログラム関係者との間で1次モニタリング結果の共有や、結果についての意見交換を行いました。

モニタリング学生部会

「キャンパス・アジア」モニタリングへの学生の参画

日本における1次モニタリングでは、モニタリング委員会・専門部会とは別に、「キャンパス・アジア」各プログラムへの参加経験を持つ学生によるモニタリング学生部会が設けられました。これは、外部質保証活動への学生参画という観点から、大学の垣根を越えて、学生自らが主体的に意見を交わし、「キャンパス・アジア」プログラムの更なる深化に向けて意見をまとめ、モニタリング委員会に提言することを趣旨とするものです。

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学生部会の活動として、2013年12月に「モニタリング学生部会ワークショップ」を開催しました。ワークショップでは、より魅力的で深化した「キャンパス・アジア」プログラムづくりに向けて、日中韓の学生総勢19名がグループワーク、全体討論を行い、「キャンパス・アジア提言書」をまとめました。この提言書は、学習面と生活面の両面について、学生のプログラム参加経験に基づいた良い点と改善点が整理され、学生部会としての提案が示されています。

この提言書は、学生部会の代表学生から、2014年1月のモニタリング委員会で報告されました。報告を受けたモニタリング委員会は、提言書に示された意見を「キャンパス・アジア」の2次モニタリングの検討に活用していくこととしました。

モニタリング報告書

1次モニタリング報告書は、モニタリング委員会によってプログラム実施主体ごとにまとめられ、モニタリング結果の総括と基準ごとの結果で構成されています。基準ごとの結果については、基準ごとに「取組みの特徴」の後に、教育の質の観点から「抽出した優れた取組み」が記載されています。また、プログラムの今後一層の進展に資するため、大学から今後の課題点が提示され、それに対するモニタリング実施側からのコメントを付記しています。

パイロットプログラムは2013年度で3年目を迎え、交流の動きも本格化していることを踏まえ、自己分析では各プログラム実施主体の2012年度末までの取組がまとめられましたが、続く専門部会の作業では2013年度の取組状況も含めてモニタリングを行い、報告書がまとめられました。

日本における1次モニタリング総括報告書
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「キャンパス・アジア」日中韓三国による質保証の取組み
-日本における1次モニタリングの報告書-

(2014年3月/大学評価・学位授与機構「キャンパス・アジア」モニタリング委員会)

モニタリング委員会では、モニタリングの実施概要をはじめ、プログラムごとのモニタリング報告書・自己分析書や学生部会の活動を総括報告書としてまとめました。

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英語版総括報告書 'CAMPUS Asia' Monitoring on Quality Assurance -Collaboration among Japan, China, and Korea- Overview of the First Monitoring in Japan
(2014年3月/大学評価・学位授与機構「キャンパス・アジア」モニタリング委員会)

1次モニタリングの結果・成果を海外に向けて発信するため、日本語版総括報告書をベースとして作成したものです。モニタリング活動の概要をはじめ、10の採択プログラムのモニタリング報告書のサマリー、モニタリング学生部会がまとめた提言書、モニタリング基準、自己分析書のサマリー等について英語版を掲載しています。

優良事例集・シンポジウム

優良事例集
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質保証からみた「キャンパス・アジア」: 優良事例集
(2014年11月/大学評価・学位授与機構「キャンパス・アジア」モニタリング委員会)

モニタリング活動のねらいのひとつに、優良事例の発信と活用があります。本資料は、日本における1次モニタリングで得られたパイロットプログラムの優れた取組を教育の質の観点から整理して紹介するものです。モニタリング報告書で抽出された事例に加え、訪問調査時のインタビュー等を通じて確認できた様々な取組についても掲載しています。

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英語版 優良事例集 'CAMPUS Asia' Programs in Light of Quality Assurance : A Collection of Good Practices
(2014年11月/大学評価・学位授与機構「キャンパス・アジア」モニタリング委員会)

日本語の優良事例集をもとに、英語版優良事例集を作成しました。日本学術振興会による「キャンパス・アジア」採択プログラムの平成25年度取組概要(Overview of CAMPUS Asia Pilot Programs April 2013 - March 2014)も掲載されています。

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優良事例集「コラム集」
(2015年3月/大学評価・学位授与機構「キャンパス・アジア」モニタリング委員会)

「キャンパス・アジア」の経験を広く発信することを目的に、優良事例集の番外編として、各プログラムの日本側大学の教職員やモニタリング実施側の声を集めた優良事例集「コラム集」を作成しました。大学からは、プログラムの特徴やアピール点、企画や運営にあたって苦労されたこと、1次モニタリングをうけて教育の質保証の観点から取り組んでいることや今後の取組などをご執筆いただきました。また、モニタリング実施側の委員やモニタリング事務局によるメッセージも掲載しています。


シンポジウム
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2014年11月27日(木)
NIAD-UEシンポジウム「国際共同教育プログラムの質保証:日中韓の連携による教育の質モニタリングを通して見えてきたことは」

シンポジウムでは、日中韓のトライアングル交流事業「キャンパス・アジア」プログラムにおける質保証の取組について、3か国の質保証機関が協力して実施している質保証プロジェクトにより明らかになった優れた事例を紹介しました。大学が質の高い国際連携を求めて、いかに課題に取り組み克服してきたのか経験を共有するとともに、プログラムを経験した学生の視点による意見も踏まえつつ、今後の「キャンパス・アジア」や国際的な共同教育のプログラムのあり方について考える機会としました。

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報告書
NIAD-UEシンポジウム「国際共同教育プログラムの質保証:日中韓の連携による教育の質モニタリングを通して見えてきたことは」
(2015年3月/大学評価・学位授与機構「キャンパス・アジア」モニタリング委員会)

本シンポジウムにおける「キャンパス・アジア」プログラムや参加学生による発表、パネルディスカッション等の記録をまとめました。当日の配付資料も掲載されています。