【11.4(火)】国際質保証制度設計業務成果発信シンポジウムを開催しました
当機構は、令和7年11月4日(火)に国際質保証制度設計業務成果発信シンポジウムを開催しました。
本シンポジウムでは「国境を越えた高等教育の質保証:実践・視点・地域的アプローチの共有」をテーマに、国内外の有識者より、国境を越えて提供される高等教育の質保証についてご講演や事例紹介をいただきました。また、当機構は、中国及び韓国の質保証機関と共同で、2025年4月に策定した「共通質保証基準」(※)の紹介を行いました。
登壇者及び発表タイトル
・杉村 美紀 氏(上智大学 学長/総合人間科学部教授)
"Advancing International Higher Education in Asia: Functions and Implications of Common Quality Assurance Standards"
・Douglas Blackstock 氏 (欧州高等教育質保証協会(ENQA)前会長)
"Quality assurance: building trust and confidence in Cross Border Higher Education, a perspective from Europe"
・西﨑 博光 氏(山梨大学教授/国際化推進センター センター長)
"Initiatives of Internal Quality Assurance in the "Asia Real Problem Solving Driven AI Education Program" in Partnership with Four Asian Universities"
・Margot Van den Broeck 氏(ルーヴェン・カトリック大学 大学教育質保証政策アドバイザー)
"Shaping the umbrella. Una Europa's internal quality assurance process for joint education"
・Seo Dongseok 氏(KCUE 大学イノベーション支援室シニアディレクター)
・Luo Xiong 氏(北京科技大学教授)
・堀田 泰司(NIAD-QE 研究開発部客員教授)
"共通質保証基準の策定-Developing the Common Quality Assurance Standards"
杉村氏からは、「アジアにおける国際高等教育の推進:共通質保証基準の機能と意義」と題して、アジアにおける国際高等教育の流れや国境を越えて提供される教育の質保証の重要性、「共通質保証基準」の課題と可能性等についてご発表いただきました。
特に、これからのアジアにおける大学間交流の質保証では、多様性を基盤とすること、柔軟性をもたせること、持続可能な質保証メカニズムを支えること、さらには、質保証のイニシアティブを取る主体や基準の在り方といったことが課題となると指摘されました。その上で、「共通質保証基準」は、学生、教員、その他のステークホルダーの共通のベンチマークとなり、相互理解を促進し、継続的な向上を支える役割を担うと強調されました。一方で、各国・地域の文脈や重視する要素の違いにも配慮しながら相互信頼を築くことや、「共通質保証基準」においても、拘束性を持たせるのではなく、基準を基盤として各主体がより良い仕組みを検討することが重要であると述べられました。
Blackstock氏からは、「質保証:国境を越えた高等教育における信頼の構築」と題して、欧州における国境を越えて提供される高等教育の質保証の現状と課題について俯瞰的にご講演いただきました。講演の中では、一口に「国境を越えた教育」といっても、様々な形態があり、国や機関等によって定義も多岐にわたるため、時として共通理解が難しい場合があるといった指摘がなされました。また、「国境を越えて提供される教育の質保証に関するガイドラインやツール、枠組み等が既に存在する中、新たなガイドラインの作成も進められている。しかし、既存のガイドラインやツール等の認識や実施は依然として不十分であり、ガイドラインの新規作成や更新よりも、既存のガイドラインやツールの活用強化と普及に重点を置くべきだ」と主張されました。
また、質を伴った広範かつ多様な学びを学生に提供するためには、各国の政府や質保証機関による質保証の取組の相互理解と優良事例の円滑な共有、さらには、質保証へのアプローチの簡素化と多様化が重要であると指摘されました。国境を越えて提供される教育は、学生だけでなく、高等教育機関や雇用主など、様々なステークホルダーにとって素晴らしい機会となり、このような教育は、教育そのものへの信頼性と透明性、そして質保証への高い信頼の上に成り立っていると述べられました。
事例紹介においては、西﨑氏から、「アジアの4大学連携における「実問題解決駆動AI教育プログラム」の内部質保証の取組」と題し、山梨大学が中国・韓国・マレーシアの大学とコンソーシアムを組んで取り組む「アジア実問題解決駆動AI教育プログラム」の概要と質保証の取組みについて紹介いただきました。
同プログラムの質保証の取組としては、①国際協定と枠組み、②運営・評価体制、③情報共有・連絡体制の3つの柱を設け、②においては、プログラム運営委員会に加えて外部評価委員会を設置して、外部委員からの助言をプログラムの改善に取り入れながら、PDCAサイクルを回していることが述べられました。
Van den Broeck氏からは、「シェイピング・ジ・アンブレラ - Una Europaによる共同教育のための内部質保証プロセス」と題し、欧州地域での国境を越えた大学間コンソーシアムである「欧州大学」に採択された「Una Europa」コンソーシアムの質保証の取組や課題について紹介いただきました。欧州の11大学が参加する同コンソーシアムでは、各参加大学から3名の上級研究者で構成される運営委員会を設けプログラムの監督を行っていることや、各参加大学から1名が参加する8つのクラスターを設け、そのうち最も重要視している質保証のクラスターでは、質保証の原則の策定、知識データベースの構築、責任の所在の明確化等を行っていることが紹介されました。また、これまでの経験から、原則を策定した上で具体的な実践に落とし込むことや、相互理解と継続的な向上を目的とした、率直な対話や情報交換、柔軟性の確保が重要であり、何よりも学生に質の高い教育を提供するという第一の目的を常に念頭におくことが不可欠だと強調されました。
「共通質保証基準」の紹介では、基準策定の背景や基準の内容について詳細に説明を行い、シンポジウム後に行ったアンケートでは、参加者の大半より「共通質保証基準」への理解が深まった、関心を持ったとの回答をいただきました。
オンラインと対面で行った本シンポジウムには、国内外から276名の参加があり、盛況のうちに閉会しました。
なお、当日の講演資料及び動画はシンポジウムページに掲載しております。
https://www.niad.ac.jp/event/event2025/entry-5768.html
(※)基準の詳細についてはこちらをご覧ください。
